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誠実に、愚直に、丁寧に。 ── アドバイス力こそ、FAの真価(前編)

吉村 琢(よしむら・たく)
M&Aアドバイザリー
エグゼクティブディレクター

M&Aアドバイザリー業務をチームリーダーとして担当。
2006年の新卒時に米系投資銀行のゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門に入社。国内外の企業及びファンドのM&A案件やグローバル・オファリング、IPOに従事。2008年のリーマンショック後、欧州系投資銀行であるバークレイズ証券においても資金調達やM&Aに従事。その後、2012年からは米系投資銀行であるリンカーン・インターナショナルにおいて中小規模のM&A案件に従事。2022年、バークレイズ証券時代の同僚と共にバリューツリー・キャピタルを設立。2023年、当社に参画。

新卒以降一貫してM&Aに従事しており、大規模案件から中小規模の事業承継まで、国籍や業種、売却・買収を問わず、数多くの案件の検討・実行をクロージングまで丁寧にサポートしてきた。

京都大学大学院情報学研究科修了、京都大学工学部卒、大阪府立茨木高校卒。

――M&Aのキャリアは約20年と伺いました。なぜこの道を?

大学院では情報学を専攻していたのですが、その頃に外資系投資銀行であるゴールドマン・サックスの会社説明会にたまたま参加したのがきっかけで、以来ずっとM&Aに携わってきました。当時はM&Aが今ほど広く知られていない時代で、私自身も深く理解していたわけではありませんでした。でも、仕事を通じて徐々にその面白さにのめり込んでいったのです。

M&Aは、企業の戦略や将来を左右する非常にダイナミックな領域であり、意思決定の場面に深く関わることができます。お客様が納得して前に進めるように、制度や業界動向、事業モデルを日々学び続けながらアドバイスを行う――そこにこの仕事のやりがいを感じています。

キャリアの初期は、決められたプロセスを正確に、迅速にこなすことが重要だと考えていましたが、経験を積む中で、ファイナンシャルアドバイザー(以下 FA)の本質は、お客様の「判断」を支えることにあると実感しました。お客様がどう決断すべきか、その意思決定に貢献することこそがFAの価値だと気づいたのです。

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――ガーディアン・アドバイザーズ(以下 GA)に参画した理由は?

いくつかの外資系投資銀行を経て、独立して知人とファームを立ち上げた経験もあるのですが、その後GAに出会い、創業者の佐藤が掲げる企業理念――「よりよい判断とその実行を支えるアドバイザーとなる」「成長し続けられるプロフェッショナルファームをつくる」「洗練された会社として世の中の模範となる」――に強く共感しました。

それぞれの理念が具体的な業務やチーム運営の根幹にあるのが印象的で、「ここなら自分も貢献できる」と思えたのが大きな決め手でした。


――GAの強みはどこにあると思いますか?

GAの強みは、主に対応している20~300億円規模の案件において、「適正なフィー」と「質の高いアドバイス」の両立ができている点にあると思います。

昨今、M&A市場のグローバル化に伴い、証券会社のフィー水準が急激に高騰しています。また、特に20 ~100億円規模の案件では、M&A仲介会社が大きく活躍していますが、彼らは買手・売手の双方から手数料を受け取る「仲介」スタイルであり、これは海外にはあまり見られない日本独特のビジネスモデルです。この仕組み上、買手・売手のどちらか一方の立場に立ってアドバイスを行うことが難しく、どちらの利益も最大化するような支援がされにくい構造になっています。つまり、このレンジはいわば「良質なアドバイザーの空白地帯」だと考えています。

この空白地帯において、買手・売手のいずれか一方に専属でアドバイスし、利益相反のない立場から、本当に必要なアドバイスを適正なフィーで提供していく。それがGAの役割であり、私たちが選ばれる理由の一つでもあります。


――実際に印象深かった案件はありますか?

GAで担当した案件はどれも、それぞれに背景やドラマがあり印象深いのですが、特に記憶に残っているのが、ある消費関連の上場企業による急成長中の未上場企業の買収案件です。私は買手側のFAを務めました。

この案件では、売手は急成長により自社単独での経営に不安を感じつつも、まだまだ大きく成長できると信じていました。一方で、買手は売手の文化的・戦略的な親和性や将来性に着目していたものの、その成長が今後も継続するかについては一定のリスクを感じていました。そのため、企業価値に対する評価には大きなギャップがあり、交渉は一筋縄ではいきませんでした。さらに、買手の事情により、最終契約の締結から実際の取引完了(株式の引き渡し)までを非常に短期間で完了させなければならず、スピード感のある対応も求められる案件でした。


――そのギャップ等をどう乗り越えたのでしょうか?

まず価格についてですが、お客様である買手の「これくらいで買いたい」という想いと、売手の「これくらいで売りたい」という希望の間には、当然ながら差がありました。その差を埋めるために必要なのが、第三者的な視点で適切な評価を提示することです。また、条件によって、どのように価格が変動するのか、リスクとリターンがどう釣り合うのかといった点も丁寧に整理し説明することが必要になります。一度しっかりと「この条件ならこの価値になる」というロジックを提示したうえで、双方にとって納得感のある着地点を目指しました。もちろん、交渉は簡単ではありませんでしたが、弊社のお客様だけではなく売手にも、成長性やリスク等を一つひとつ言語化してお伝えすることで、最終的には提示した価格レンジの中でもっとも納得感のある水準で合意することができました。

また、最終契約の締結から実際の取引完了までを非常に短期間で終えなければならなかった点も大きなチャレンジでした。この局面でも、「何が重要で何が重要でないのか」、「リスクはどのくらいなのか」、「お客様として最終的に判断すべきことは何か」といった点を明確にし、売手と交渉を進めました。そのうえで、それらを契約書に反映することで、短期間でもお互いにやるべきことを正しく理解し、協力体制を築くことができました。結果として、非常にスムーズに取引を完了することができたと思います。

案件が終わった後に、「GAに頼んで本当によかった。GAでなければここまでスムーズに進まなかった」と言っていただけたのは、アドバイザーとして大きなやりがいを感じる瞬間でした。


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――アドバイザーとして大切にしていることを、あえて一言で言うなら?

「愚直にアドバイスすること」ですね。クライアントにとって耳あたりのよいことだけを伝えるのではなく、たとえ言いにくい内容であっても、正しいと信じるアドバイスをすることです。ただ、とは言ってもM&Aを進めるうえでは、お客様側もさまざまな事情があります。だからこそ、私たちはただ正しいと信じるアドバイスをするのではなく、まずはお客様の話を丁寧に聞き、何が最適かを常に考え、柔軟に対応することが何より大切だと感じています。

それができるのは、GAの理念がメンバー全員に共有されていて、アドバイスの質を最優先にしているから。私は、それを現場で体現していく一員として、この仕事に誇りを持っています。

 

後編へ続く

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