GA Approach to DX Advisory〜ITデューデリジェンス〜

DXアドバイザリーを提供する弊社では、 

  1. ITの実態把握を目的としたITデューデリジェンス
  2. 企業の経営戦略や事業計画を実現するためにITをどのように活用していくか、中長期的な観点であるべきITの姿を整理するITグランドデザインの策定
  3. ITグランドデザインに基づき、個別のプロジェクトを推進するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)支援 

の3つのサービスを提供しています。

上記は弊社のみならず、ITコンサルティング会社など様々な会社も提供していますが、各社のこれまでの経験や担当者の能力、組織体制などによってサービスの内容は異なってくると考えています。 
そこで当コラムでは、各サービスについて弊社の特徴や実例を中心に解説します。

初回となる今回は ITデューデリジェンスを取り上げます。 

 

ITデューデリジェンスの定義 


一般的にITデューデリジェンス(以下 IT DD)は、M&AプロセスにおけるDDの1つで「買収対象となる企業のシステムや各種IT資産を分析・評価すること」と表現されます。

弊社は祖業がM&AアドバイザリーということもありIT DDについてご相談をいただくことが多いですが、感覚的にここ数年でプライベート・エクイティ・ファンド、事業会社を問わずIT DDに関する問合せは増えています。

これは、DXという言葉が広く浸透し、企業価値向上においてITの重要性が増していること、そしてセキュリティ事故の増加も顕著になっていることが背景にあると考えています。こうした状況から、企業のITの重要性とリスクに対する感度が高まっていると言えるでしょう。

一方で冒頭で触れたとおり、弊社はIT DDを「ITの実態把握」と捉えているため、必ずしもM&Aの場面に限定してサービスを提供しているわけではありません。 

例えば

  • 基幹システムの刷新やDX推進など、自社のIT環境に大きな変更を伴うプロジェクトをご支援する場合 
  • IT関連のコスト(各種システムの利用料やライセンス料 / ベンダーの保守費用 / 定期的に発生するIT投資費用など)に課題意識を持っているクライアントからご相談をいただいた場合

などにおいてもまず現状のITを整理し、そのうえでプロジェクトの進め方や具体的な打ち手を検討するため、このような場合もIT DDを実施しています。 
以降は上記の場合なども含む広義のIT DDについて記載します。 

 

GAの着眼点と強み


IT DDにおける弊社の確認項目は主に、

  • システム / インフラ
  • IT組織 / 人材
  • セキュリティ
  • ITコスト

です。具体的なイメージは以下をご参照ください。 

IT DDの概要

これらをベースに案件の事情を考慮したうえで、どの項目・観点に重点を置くかを検討し、IT DDを実施します。 

一例として、事業を分割したり事業子会社を売却したりするいわゆるカーブアウト案件でのIT DDをご紹介します。 
カーブアウトが行われると、一般的にはその後2-3年の移行期間の間は売主(旧親会社)のシステムやインフラを利用させてもらうことが多く、その移行期間中の取り決めとしてTSA(Transition Service Agreement)と呼ばれる業務委託契約を結びます。このTSA期間内に、売主と共有していたシステムやインフラを分離し、売却対象となる事業や事業子会社が、独立した会社として運用できるようにすること(=ITのスタンドアローン化)が最優先事項となります。 
すなわち、システムやインフラについてはまず「新規に構築が必要なもの」と「継続利用できるもの」を把握し、新規構築分をどのように実現するかという方針を整理する必要があります(そしてその内容がITコストやTSA期間に大きく影響します)。 

また、上述のシステムの新規構築にあたっては当然ながらIT組織や人材が必要となりますが、システムの保守運用といった通常業務に加え、当該プロジェクトを推進するという追加の業務負荷に耐えうるかや、そもそも必要なIT人材はカーブアウトの承継対象になっているかなどを精査することが求められます。 

このようにIT DDは案件ごとの個別の事情を勘案して柔軟に対応する必要がありますが、手前味噌ながら弊社の強みは 

  1. 事業計画と整合の取れたITの評価
  2. 多様な観点での技術目線の目利き

と考えています。 

1について、例えばBtoCの企業が自社ECの売上を伸長させる計画を描いていた場合には、現行のシステム構成や業務フローがその伸びに耐えうるかや、デジタルマーケティングなど新たに求められる業務スキルを持つ人材が社内にいるかを確認する必要があります。仮に難しい場合はシステムの刷新や人材の採用・強化などをITの課題として捉え、解決策を検討しなければなりません。 
また、IPOを目指す会社の場合は高い水準のIT内部統制が要求されます。そのため、現状のシステムで業務に支障がない場合でも、ガバナンス(企業統治)の観点からシステムの改修や入替えが必要になることがあります。 

いずれにしても会社の方向性や経営層(プライベート・エクイティ・ファンドなどの株主を含む)の考えを理解したうえで、それがITと平仄が取れているかを見極める必要があります。この点、弊社はM&Aアドバイザリーも専門としているため、経営目線の視座を持ち、それに基づく対話を得意としています。 

2に関しては、システムやソリューションの評価に加え、開発力や組織文化といった技術を支える土壌も精査します。 
過去の案件では、プライベート・エクイティ・ファンドによるIoT機器メーカーの買収案件のIT DDを実施した際に、上述の通常の主要な確認項目に加えて

  • 対象会社のソフトウェアエンジニアや起用しているベンダーの力量
  • 対象会社製品を利用するユーザーのコミュニティ 

などの定性的な要素を確認し、ポジティブな評価ができたことから買収判断の後押しとなりました。
これは、弊社の高柳が25年来にわたりソフトウェア / インターネット関連企業を経営してきた経験に依拠する強みであると考えています。

 

IT DDの進め方 


案件次第ではあるものの、IT DDは基本的に1ヶ月で実施することが多いです(ただし、特にM&AプロセスにおけるIT DDの場合は、2週間など限られた期間内でリスク事項を洗い出すこともあります)。 

M&Aプロセスやその他のプロジェクト立ち上げ前のいずれの場面においても実態把握は欠かせないものの、その後の方針の立案や実行がより重要であるため、期間はある程度絞って集中的に実施することが健全と考えています。 

IT DDを1ヶ月で実施する場合のスケジュール感としては 

  • 現状の調査・分析(1〜2週目)
    • 受領資料の精査やQA対応(書面での質問・回答のやり取り)
    • 重要人物へのインタビュー
  • 中間報告(2週目後半〜3週目前半)
    • 当該時点での調査結果の共有
    • 最終報告に向けたフィードバックの受領
  • 追加調査および最終報告(3週目後半以降)
    • フィードバックを踏まえたQAやインタビューの実施
    • 追加調査結果を中心とした最終報告

がベースとなりますが、クライアントの要望や状況を踏まえ柔軟に対応します。 

 

以上が弊社が提供するIT DDの概要です。 
次回はIT DDで現状を整理した後に、中長期的な目線でITの全体像を設計するITグランドデザインについて詳述します。 

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