GA Approach to DX Advisory〜IT グランドデザイン策定〜

DXアドバイザリーを提供する弊社では、 

  1. ITの実態把握を目的とした ITデューデリジェンス
  2. 企業の経営戦略や事業計画を実現するためにITをどのように活用していくか、中長期的な観点であるべきITの姿を整理するITグランドデザインの策定
  3. ITグランドデザインに基づき、個別のプロジェクトを推進するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)支援 

の3つのサービスを提供しています。

前回はITデューデリジェンスについてご説明しましたが、2回目となる今回は ITグランドデザインの策定を取り上げます。

ITグランドデザインの位置づけ

弊社ではITグランドデザインを「会社がその事業目的のために行うIT投資において、とるべき方針を定めたもの」と定義しています。
ITグランドデザインを策定することが望ましいのは、例えば以下のような場合です。 

  • M&Aに起因して、ITの抜本的な改革に着手しようとしている
  • 基幹システムの刷新など、全社に影響を及ぼすITの取組みを検討している
  • 中期経営計画において、ITの利活用やDX推進による収益性の向上や業務効率化を志向している

そもそもITグランドデザインを策定する目的は、経営層・株主・IT部門・業務部門などさまざまな利害関係者の間で、ITに関連する経営判断事項について合意を得ることにあると考えています。
上記のいずれの場合においても、関係者間におけるITの環境や考え方には大小の開きが存在するため、ITグランドデザインを策定することで将来的なITの方向性について全社的な共通認識を持つことが重要になります。

GAの着眼点と強み

弊社では以下の6つの要素をベースにITグランドデザインを整理しています。

ITグランドデザインの6要素

各社の状況によって、これら6要素の重要度は異なりますが、基本的には6要素を1セットとして検討します。
その理由を弊社が過去にご支援したプライベート・エクイティ・ファンド(以下、PEファンド)の投資先企業を例にとってご説明します。
当該企業は約20年前にスクラッチ開発した基幹システムを改修を重ねながら利用していましたが、老朽化やシステム仕様のブラックボックス化が課題となっていました。
そのため、企業買収後の100日プラン(買収直後の最初の100日間で集中して取組むべきことをまとめた計画)において基幹システムの刷新の検討が必須の対応事項として認識されていましたが、それにあたっては
  • これまでのように自社でシステムを開発するか、もしくは世の中にあるパッケージ製品を利用するか(=IT開発方針)
  • 基幹システムを導入した後に機能追加の要望が発生した場合にどのように対応するか(=IT開発方針)
  • 基幹システムの刷新を進める場合の社内の人員や経験は充足しているのか、今後の経営方針や事業計画を踏まえた場合のIT体制はどうあるべきか(=IT組織 / 人材)

などを併せて検討しないと実現できません。
また、本件は株主であるPEファンドがIPOによるExitを想定していたため、上場基準に耐えうるIT内部統制を構築することも論点となりました。
その場合には、

  1.  導入・利用しているシステムやインフラなどのIT環境をどのように安全に保つか(=セキュリティ)
  2. ベンダーとの契約や利用中のクラウドサービスのSLA(Service Level Agreementの略で、サービスを提供する事業者がサービスの利用者に対し、サービスの品質について合意する契約)の内容を把握し、リスク管理できているか(=IT法務)
  3. 上述の取組みや運用を社内ルールやドキュメントとして整備し、その証明として認証を取得するか(=認証)
などを高いレベルで確立することが必要となります。
これらは新システムの検討と密接に関わるため、並行して検討したほうが手戻りが発生せず効率的に進められます。

各要素間の関係をまとめると以下のようなイメージになります。
この関係性はあらゆるITグランドデザインに共通しますが、どの要素を重点的に見るかは各社の状況や課題に応じて判断していくことになります。

 

弊社のITグランドデザインの特徴としては、

  1.  経営方針を理解したうえでの適切なITの方向性を提示すること
  2. その時点における概算コストを精度高く出せること
の2点だと考えています。1について、前述のPEファンドの投資先企業の例では、ITにかかるコストをできるだけ抑えたいという株主と経営層の意向がありました。
背景には、これまで機能追加の度に開発ベンダーに改修を依頼していたこと、当該ベンダーにシステムの知見や管理を依存していたことによるIT費用の高止まりがありました。いわゆるベンダーロックイン状態に陥っていたわけです。

したがって、基幹システムの刷新にあたり、初期投資や導入後のランニングコストを抑える案を検討し、結果として「パッケージの標準機能の活用を前提としたシステム刷新」という方針を立案しました。
なお、この方針は当該企業の従来のシステム導入方針と大きく異なるものであったため、まず経営層に重要性やメリット・デメリットをご説明し、ご理解いただいたうえでトップダウンでの社内への浸透を図りました。それにより全社的に共通認識を持った状態でプロジェクト推進をスムーズに進めることができました。

2に関しては、ITグランドデザインを検討し、株主・経営陣が最終決定するにはその実現に向けたおよその費用を示すことが必要になります。
一方で、ITグランドデザインを策定するタイミングではシステムの詳細な要件が固まっていないため、ベンダーから提示される見積りは不確実性が高いものになります。弊社の経験上では、当該時点での概算見積りとプロジェクト完了時の費用の差は±20%程度になります。
その不確実性は開発費用の振れ幅となるわけですが、重要なのはその振れ幅がどの程度かを見極めることです。
弊社では、ベンダーとの前広なコミュニケーションや過去の事例などを踏まえ、精度の高い費用感をお出しするよう努めています。

またシステムは代表的な例ですが、それ以外の要素でも費用の振れ幅は存在します。
例えばIT組織と人材の観点でリソースの増強が必要となった場合、外部から採用するか、内部から登用するかなどの選択肢がありますが、昨今の市場環境を踏まえるとIT人材を社員として採用するのは容易ではありません。
そのような場合には、採用活動が早期に完了する理想的な案と、採用が成功するまで一時的に外部専門家を起用したりフリーランス人材を活用したりする折衷案も考えておき、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。
したがって、それぞれの要素で複数のプランを検討・整理しておき、最も費用が嵩む案や、最も現実的に起こり得る案などをお示しすることが重要と考えています。

ITグランドデザイン策定の進め方


弊社がITグランドデザインを策定する際、期間は3ヶ月を基本としてご提案させていただくことが多いです。
もちろんクライアントの規模や状況によって変動しますが、後続のフェーズでプロジェクトを期間内に完了することが本丸であること、かつ策定後に事業環境の変化などに応じて見直す(核となる方針は変えずとも適宜アップデートする)場合もあることから、このような期間設定としています。

弊社が3ヶ月で進める場合の大枠のスケジュールは以下のとおりです。

1. 現状分析(1ヶ月間)
    •  受領資料の確認・QA対応(定例会議での質問・回答のやり取り)
    •  IT部門をはじめとする関係者へのインタビュー
    • 経営層や既存ベンダーとのディスカッション
    • システムなどITの全体像の把握と課題の優先順位づけ
2. グランドデザインの策定(1.5〜2ヶ月間)
    • 現状分析を踏まえた、6要素の方針の整理
    • 新規ベンダー候補とのコミュニケーション(情報収集 / 概算見積りの取得など)
    • 中期経営計画など経営観点での必要な論点の取り込み
    • ITグランドデザインの報告・提出
3. 次フェースの準備(0.5ヶ月間)
    • 次フェーズの作業内容やスケジュールの検討
    • プロジェクト推進体制の構築

(※IT DDから継続してご支援させていただく場合は、IT DD時の実態把握の度合いを踏まえ1を簡素化または省略する場合あり)

週次の定例会議をベースに進捗の確認や検討事項のディスカッションを行い、必要に応じて都度の会議も行いながら着実に進めていきます。

また、クライアントとの連絡はビジネスチャットツール(ex. slack)やweb会議を用いて機動的にコミュニケーションを取れるようにする一方、重要な会議体は物理開催するなどメリハリをつけています。

以上、弊社が策定するITグランドデザインの概要や進め方についてご説明させていただきました。

最終回となる次回は、策定したITグランドデザインに基づき、プロジェクト化された個別の取組みを推進するPMO支援について詳述します。



 

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