カーボンオフセットとクラウドサービスの選択基準
前回のポスト
では、ベンダーロックインならぬプラットフォームロックインについての考え方を整理したが、基幹業務システムの選定基準となる項目は年々増えてきている。
一方で、特に公器としての上場会社には、SDGsの批准も今や必須で大切な取り組みとなってきている。その中でも
カーボンオフセット
については、世界的に法律も整備されてきており、企業には数値目標が課せられている。また、その数値目標の達成度合いが「監査」され、場合によっては課徴金が課せられるのがグローバルスタンダードと承知している。
弊社のDX支援のメニューに
PMI(Post Merger Integration)
にかかる「基幹システムのリプレイス支援」というものがあるが、その比重はとても重く、基幹業務を司るクラウドサービスを選ぶ際にとてもたくさんの選定基準(選定理由)がある。例えば、IT内部統制の観点からはセキュリティーレベルのコミット具合(
SLA
の内容評価)、財務会計の観点からはJ-SOX対応などさまざまである。
これに加えて、近い将来、クラウドサービスの選定基準にカーボンオフセットの数値基準が含まれるようになると予想している。
日本でも例えば、環境省などが温室効果ガスのサプライチェーン排出量算定を行う
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
の取り組みを初めている。
WWF
、
CDP
(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、
世界資源研究所
(WRI)、
国連グローバル・コンパクト
による共同イニシアティブである
SBTi(Science Based Target Initiative)
に参加している日本企業は、2021年8月の時点で122社に上っておりその内93社が既に認定を受け、29社が2年以内のSBT設定にコミットしている。
つまり、会社で使う車両がどれくらいの排気量なのかによって自動車税が異なるのと同様、会社で使うクラウドサービスがどれくらいのCO2を排出しているかが重要な要素となってくることが予想される。となれば、CO2排出量の少ないものを選ぶのが経営合理的である。
クラウドサービス企業は、その規模が大きければ大きいほど大きなデータセンターを抱えており、途方もない消費電力がある。
従ってその雄であるGoogleは2020年9月に
“創業した1998年からカーボンニュートラル
を達成した2007年までに排出した「カーボンレガシー(二酸化炭素排出量の遺産)」をすべてオフセットし、ゼロにし(中略)さらに、2030年までに世界の事業所やデータセンターなどで使われる電力を、証書などを用いた再生可能エネルギーの利用ではなく、二酸化炭素を排出しない「カーボンフリー」エネルギーに完全に切り替える”
※
こちら
より引用
と
宣言
した。
つまり、こういった取り組みがなされている企業のクラウドサービスであればあるほど、選ばれる時代になってくるのは明らかなのだ。
当該基準の罰則が厳しくなってから、又は、上場維持のための要件になってから対応すれば良いというのも一理ある。しかし、業務基幹システムとしてクラウドサービスを利用している場合、今日の明日で他のサービスに移行するのは困難を極める。従って、今のタイミングで、基幹業務システムの移行スケジュールがある会社はラッキーかもしれない。
IT内部統制構築の文脈でぜひ一度立ち止まって、クラウドサービスの選定基準としてカーボンオフセットも併せて考えてもらいたい。
ガーディアン・アドバイザーズ株式会社 パートナー 兼 IT前提経営®アーキテクト
立教大学大学院 特任准教授
高柳寛樹
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